湖の対岸は、他が全て急な崖のような地形なのに、この付近だけがなだらかになっている。川が流れ込んでいるような跡もあったので、雪解け時期に限って現れるような川なのかも知れない。
湖の中に水没している立ち木があるところを見ると、通常の水位はもう少し低いのだろう。
また、湖岸には水没していたような部分も見受けられるので、雪解け直後にはかなり水位が上がっていそうだ。
雪解け水が流れなくなっても、この付近からは湧き水が流れ出しているらしい。澄んだ水の中にはサンショウウオの卵が浮かんでいた。
私は直接見なかったけれど、ここにはニホンザリガニも沢山生息しているとの話である。
周りの木々は新緑に染まり、林床では一面のフッキソウが花を咲かせている。その中には朽ち果てた倒木が横たわり、人間の手の入らない原生のままの自然の営みがそこで続けられている。
豊似湖周辺の岩場ではナキウサギも生息している。
「チチッ」と言う小さな鳴き声が聞こえたら、それは多分ナキウサギの声である。その姿は滅多に見られないけれど、周りの岩場を注意して見てみよう。運が良ければ、可愛らしいその姿に出会えるかもしれない。
ナキウサギは氷河時代からの生き残りと言われているが、この豊似湖が氷河が運んできた岩石によって作られたことを考えれば、ここに流れる悠久の時間を感じることが出来る。
新緑の風景も素晴らしかったけれど、次回は是非紅葉の季節にも訪れてみたいものだ。出来ればその時には沼見峠まで登って、そこからの展望も楽しみたい。
今回は帰りの林道でエゾシカの群れとも出会うことが出来た。最近の北海道では人里まで平気でエゾシカが現れるようになってきたけれど、この様な場所で警戒心の強いエゾシカに遇えると嬉しくなってしまう。
シカ以外にも、日高のこの付近ではヒグマも生息しているので、そのことを頭に入れたうえで行動するようにしたい。熊除けの鈴くらいは装備しておいた方が良いだろう。
|