国道5号線を森町から鳥崎川沿いに上流へ向かう。やがて、鳥崎川に沿うように続く道は切り立った崖に挟まれた峡谷へと入っていく。
この付近が鳥崎渓谷と呼ばれ、道南の紅葉の隠れた名所としても知られている。
このルート沿いに8箇所の景勝ポイントが設定され、鳥崎八景としてそれぞれ名前が付けられている。
鳥地獄、屏風岩、二見ヶ滝、獅子狭間、虹懸岩、駒ヶ岳ダム、新鳥崎大橋、上大滝。名前だけ見るとかなり興味が湧いてくるが、この八景にあまり期待しない方が良いだろう。他のサイトで詳しく紹介されているので、それぞれの説明は省くが、私がここを通ったときも八景の内の最初の五つは何処がそれなのか気が付かずに通り過ぎてしまったくらいだ。
別にこの八景が無くても、美しい渓谷美は十分に堪能できる。そのおまけとして、この八景探しをしてみるのも面白そうである。
清らかな渓流、そそり立つ荒々しい岩肌、その荒々しさを和らげるように木々が纏わり、新緑や紅葉の時期の美しさは格別である。
道路は1.5車線ほど、その先に採石場のような施設があるので大型車の通行も多いようだ。運転には気を使うが、すれ違い用のスペースも頻繁にあるので、そこに停車してゆっくりと景色を楽しむこともできる。
駒ヶ岳ダムの下には「緑とロックの広場」と名付けられたキャンプ場がある。山奥に位置する割りには立派なトイレやバーベキューハウスが整備されているのでちょっと驚かされる。
私がここに泊まったときは、他に誰も利用者はいなかったが、シーズン中は結構キャンパーも多いようだ。キャンプ場の隣に岩が剥き出しになった崖がそびえ立ち、ちょっと変わった風景を楽しめるキャンプ場である。
キャンプ場を通り過ぎて先に進むと駒ヶ岳ダムの展望広場があり、キャンプ場が眼下に見渡せる。さらに進むと道路はダム湖を渡る橋にさしかかり、この橋の上からの眺めもなかなか美しい。新緑や紅葉の時期はその美しさもひとしおだろう。
そこから道は砂利道に変わり、いよいよ山奥に入ってきた雰囲気を感じる。
そしてしばらく進むと、鳥崎八景の最後に控える「上大滝」に到着である。
ここには上大滝の看板と道路沿いに数台程度の駐車スペースがある。この手前に少し広めの駐車場と簡易トイレが設置されているが、あまり利用されている様子は無かった。紅葉時期以外はあまり訪れる人もいないのだろう。
道路上から滝を見ることがはきないので、そこから河原まで少し急な階段を下りることになる。その途中には見上げるようなブナの大木があり、滝への期待を高めてくれる。
そして河原に降り立つと、玉石の河原の奥で水しぶき上げる勇壮な上大滝の姿が目に飛び込んでくる。
何の変哲もないごく普通の滝の姿だが、苔生した岩壁に3方を囲まれ、頭上にはブナの枝が天蓋のように覆い被さり、森の中に作られた一つの別世界のような空間の中で轟々と水が流れ落ちる様は感動的ですらある。
上大滝から奥にも行ってみたが、後はそれほど見るべきものは無かった気がする。もっと奥まで入れば面白いスポットが見つかったかも知れないが、林道マニア以外はこの上大滝を終点に引き返した方が良いだろう。
国道入り口から上大滝まで約10kmほどの道のり、運転にはちょっと気を使うが道南ドライブのついでに立ち寄るのにお勧めのスポットである。
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