積丹半島と言えば、神威岬に積丹岬の島武意海岸が有名な観光スポットだろう。
島武意海岸の駐車場に向かう坂道の途中には積丹岬キャンプ場があるが、観光客の車が常に横を通過していくし、ゆっくりとキャンプを楽しめるような場所ではない。
駐車場の隣には大きなレストハウスもあり、食事や土産物を売る売店も入っている。
この駐車場から、人が二人かろうじて並んで歩けるくらいの小さなトンネルを出入り口から差し込んでくる明かりだけを頼りに通り抜けると、突然目の前にすばらしい島武意海岸の景色が現れる。
このトンネルは、明治28年ニシン漁が盛んだった頃に海岸から干場までニシンを運ぶために掘られたそうである。
トンネルを抜けた途端に現れる絶景、この演出効果がその感動をいっそう大きくしてくれるのだ。
おおかたの人はそこの展望台からの景色に満足して引き返してしまうが、せっかくならばそこから続く急な階段を海岸まで降りてみたい。美しい海と切り立った断崖が続く風景は、上から見下ろすのとはまた違った美しさである。
ここまでは一般の観光コース、隠れた積丹の美しさを堪能するためにはそこから続く積丹岬遊歩道を歩いてみたい。
礼文島の桃岩から元地灯台までのトレイルを思い起こさせるような海岸台地の中に延びる遊歩道は、歩いているだけで心が洗われるようだ。
駐車場から灯台までの400mは舗装された車道を歩くことになるが、海も見えずにダラダラとした上り坂で、退屈な区間である。しかし灯台までたどり着くと、積丹ブルーの美しい海が眼下に広がるすばらしい景色を堪能できる。
これから歩いていく遊歩道が、樹木のほとんど無いススキや笹に覆われた海岸台地の中を縫うように続いているのが見渡せる。
天気が良ければ、積丹の海の美しさは格別である。所々に断崖の下を見下ろせるような場所があり、青く染まった海底の様子まではっきりと見ることができる。
灯台から800mほどで笠泊海岸の休憩ポイントに到着する。冬期間にはここでアザラシウォッチングも楽しめるようである。
車道から直接笠泊海岸まで上ってくる道もあるが、島武意海岸の駐車場から歩くか、近くの車道から沢沿いの道を上ってくるか、迷うところだ。
車を利用してのアクセスならば、どのみち往復しなければならないので、笠泊海岸近くの入り口を利用した方が良いかもしれない。
この入り口には「積丹岬自然歩道入り口」の看板が立っており、そこから笠泊海岸の展望台までは700mほどである。
笠泊海岸から先には一際高い断崖がそびえ立っているのが見える。遊歩道はこの断崖の裏側を回るように続いているが、その部分だけは樹木の間を通り抜ける感じだ。
この付近の木々は皆、小さく捻くれた感じで育っているが、強風に晒される厳しい自然環境を感じさせられる。その樹林帯を抜けると女郎小岩の展望台に到着、笠泊海岸からは400m程だ。
ここには立派な展望テラスも作られているので、ゆっくりと奇岩の姿を楽しむことができる。私が訪れたときは、そこから先は台風の影響により通行止めになっていたが、もう少し行ったところにも別の角度から女郎小岩を望める場所があるみたいだ。
そのまま進むと1.7kmで遊歩道は終わり、最後は車道に出てくる。笠泊海岸の入り口までは、車道を1km程歩いて戻ることもできる。
青空の広がる1日、美しい海を眺めながらのんびりと歩いてみたい遊歩道である。
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