宗谷岬から浜頓別に続くオホーツク沿岸には特にこれと行った観光地はない。
交通量も少なく、普通は一気に走り抜けてしまうような区間である。途中で立ち寄るとしたら道の駅がある猿払公園くらいだろう。
そしてせいぜい、国道を挟んだ海岸に建つインディギルカ号遭難者慰霊碑の前で記念撮影をするくらいのものだ。我が家のアルバムにも、20年前に道北をドライブした時にこの慰霊碑の前で撮した写真が貼られていたりする。
しかし、時間に余裕があるのならば、ちょっと寄り道するだけで新たな発見がありそうな土地でもある。
まずは原生花園、この付近では浜頓別町のベニヤ原生花園が有名である。私も、この付近を走る機会があれば何時も立ち寄ってしまうくらいに、お気に入りの場所だ。
駐車場、展望台も整備され、それなりの観光地となっている。それでも観光客を乗せた大型バスが何台もやってくるような場所でもないので、ゆっくりと原生花園の散策を楽しめる。
湿地帯の中を通る木道を歩いていくと牧草畑を刈った後のような歩きやすい散策路に出てくる。
ここの原生花園はセリ科植物の白い花が多く、その中にハマナスやエゾカンゾウ、ヒオウギアヤメが咲いている。外周の散策路を一周すると約3km、短縮コースで1.2kmと、のんびりと歩くにはちょうど良い距離だ。
一方エサヌカ原生花園の方は名前もあまり知られていなくて、ここを目的にして訪れるような人はほとんどいない。
猿払村の市街地から国道238号を離れて海岸沿いの道を南下すると、道路沿いの海岸線がそのまま原生花園になっている。観光地と言うよりも、道ばたのごく普通のありふれた景色と言った趣だ。
花の時期は6月下旬から7月上旬となっているが、残念ながら私はこの時期に訪れたことはない。それでも、この時期の美しさは十分に想像がつく。
宗谷岬から北オホーツクの沿岸を走ってみれば解るが、この時期はそこら中が原生花園の様相をなしているのだ。以前もこの付近を走っていて、黄色の絨毯を敷き詰めたように咲いているエゾキンポウゲの大群落に目を奪われたことがあった。
エサヌカ原生花園を貫く交通量の少ない舗装道路を走りながら、素晴らしい風景を楽しめるだろう。
この道をそのまま南へ走るとクランク状に折れ曲がっていて、そのクランクを過ぎたあとに続く直線部分でまた素晴らしい光景に出会える。
道の両側は真っ平らな牧草地が広がり、その中をひたすら真っ直ぐに伸びている道路。道東の方でもよく見られそうな風景だが、地形が起伏していたり防風林があったりと、ここの風景とは全く別物である。
それに、道路沿いには電柱が立っていないと言うことが、ここの風景をより際だたせているのだ。
北海道でもここだけでしか見られないような風景、国道238号を走るのならばちょっとだけここに寄ってみることをお勧めする。
その場合は、国道沿いに立つ「モケウニ沼」の看板を目印に曲がれば良いだろう。そうするとこの直線道路の中間部分に出ることができる。
ちなみに国道が通るこの付近は浅茅野台地と呼ばれ、オホーツクに向かって広がる広大な牧草地の風景が印象深い。
モケウニ沼はそんな牧草地に回りを囲まれ、ひっそりと佇んでいる。
質素な駐車場と休憩施設が整備されていて、そこから沼に向かって真っ直ぐな木道が伸びている。牧草畑の中の直線道路もそうだが、北海道らしいと言うのか、何とも大雑把な道の付け方だ。
この木道の回りをよく見ると、フカフカの水苔に覆われ、思いの外豊かな植生に驚かされる。
この木道を歩いていると、先ほどまでの牧草畑の風景が頭の中から消えて無くなり、まるで別世界に迷い込んだような錯覚に捕らわれる。
このモケウニ沼を含めて猿払付近には沼が多い。
国道から見えるポロ沼は夕日が綺麗な場所として知られているようだが、私としたらやっぱり夕日を楽しむのならばクッチャロ湖まで行きたい。
周囲を森に囲まれたカムイト沼は、他の沼とはちょっと違った雰囲気だ。駐車場もあり、水上に張り出した木道も整備されて間近に美しい景色を楽しむことができる。
地図で見ると他にも沢山の沼があるので、地図を頼りの沼巡りをしてみても楽しそうだ。
沼の他に湿地帯も多い。
宗谷丘陵を水源とする幾筋もの川が蛇行しながらオホーツク海に流れ込んでいるが、それらの川が湿地帯を作っている。
そのような湿地沿いを通る道道猿払浅茅野線などは、雪解け時期には道路が冠水してたびたび通行止めになったりするくらいだ。
夏から秋にかけては、これらの湿地はほとんど藪に覆われてしまうので、野鳥の姿を探すくらいの楽しみしか無くなるが、こんな場所は春先が楽しいはずである。
そこかしこで水芭蕉やエゾノリュウキンカの花が咲き乱れ、道北に訪れる遅い春の風景を楽しむことができる。
と、これはあくまでも私の想像である。
そんな時期にここを訪れて、じっくりと穴場スポットを探して回りたいものだ。
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