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幌加内

朱鞠内湖、そば畑、笹の墓標

 私は飽きっぽい性格なので、同じキャンプ場に何回も泊まると言うことは殆どない。その中で一ヶ所だけ例外になっているのが朱鞠内湖畔キャンプ場で、私の家からは200km以上離れているのにも拘わらず年に2,3回は利用させてもらっている。
 このキャンプ場は場内が広く地形も複雑なので、テントを張る場所によってはガラリと雰囲気が変わってしまう。そして、季節、天候の違いによっても、毎回違う表情を見せてくれるのだ。
 その他にも私がここに引きつけられる理由の一つが、幌加内という土地の魅力なのである。  

朱鞠内湖 朱鞠内湖 朱鞠内湖
夏の朱鞠内湖 秋の朱鞠内湖 冬の朱鞠内湖
朱鞠内湖 朱鞠内湖 朱鞠内湖
朱鞠内湖の朝

朝靄にかすむ朱鞠内湖

切り株の森

 幌加内町は南北に細長く広がっていて、周りを山に囲まれた盆地状の地形になっている。そしてその中央を流れるのが雨竜川だ。
 札幌から向かうと、深川市多度志から先は雨竜川に沿ってただひたすら国道275号を北上する感じである。この道は交通量も少なく、遅い車にイライラさせられることも無いので、快適なドライブを楽しむことができる。
 幌加内峠を越えると一気に視界が広がり幌加内町の市街地に入る。
 幌加内町は日本一の蕎麦の産地としても有名だ。蕎麦の花が咲く時期、この付近は一面が真っ白に染まってしまう。この光景だけでも一見の価値があるだろう。
 当然、ここで食べる蕎麦も美味しい。
 私が食べた中でお勧めの店は、幌加内町市街地のバスターミナルを併設した交流プラザの中にある「ほろほろ亭」だ。100食限定と言うことなので、早めに入店した方が良いだろう。
 もう一店は、そこから少し北に走った政和という集落の中にある「飯処せいわ」という店である。店の名前の通り、メニューは普通の食堂と同じであるが、蕎麦の美味さは保証できる。
 毎年9月はじめに新そば祭りが開かれるが、幌加内町が一番観光客で賑わうときだろう。

 幌加内町を通り過ぎて山間の道を抜けると、道の駅幌加内とそれに隣接して「せいわ温泉ルオント」がある。レストランも併設した立派な温泉施設だが、ここの蕎麦もそれなりに美味しい。
 その先が政和と呼ばれる地区だ。日本一のそば畑と命名された広大なそば畑が広がっている。
 この集落にある「飯処せいわ」は旧深名線の政和駅の建物を利用した店である。店内に入ると何となく昔の駅舎の雰囲気が感じられる。鉄道ファンならば是非立ち寄りたい店だ。
 ここから先、朱鞠内までが私の大好きな区間である。
 蕎麦の花が咲く時期以外はこれと言って何も見るべきものもない。それでも私の感性にとても心地よく染み込んでくる風景が広がっているのである。
 何でここの風景が好きなのか、自分でも上手く説明することができない。
 東側の天塩山地の山の連なり、それほど標高の高い山でもないのに、雪に覆われた冬のその姿は高山のような厳しささえも感じられる。
 春先にこの付近を走ると、新緑に染まりはじめた周りの木々とその奥の残雪の残る山並みがとても印象的なコントラストを呈する。
 この山並み、道路からの距離はそれほど遠くないはずなのに、遙か彼方にあるように感じられるのが何とも不思議だ。
 ふと思ったのだが、私の故郷である十勝にも同じような風景がある。広大な十勝平野とその背景の日高山脈の連なり。これを箱庭のように縮小して再現したら幌加内のこの風景になるのではないだろうか。
 意外と私がここの風景に惹きつけられるのは、子供の頃の原風景が頭の中に蘇ってくるからなのかもしれない。

 もう一つ好きなのが、所々に見られる離農跡地らしき土地の風景だ。過酷な自然環境の土地に入植し、結果的に夢破れてその土地を去ることになってしまった人々が存在したという現実はあるが、そのことを考えなければ、人間の手によって切り開かれた森が次第に自らの力で再生していくその様子を見ると、何となく嬉しくなってしまう。
 北海道の中では、一方では森を切り開き丘を崩し川の流れを変えるような人間の横暴な行為が繰り返されているが、その一方で、この土地のようにかつての人間の行為を覆い隠してしまうような自然の力強さも見ることができるのである。
 添牛内付近で国道275号は、苫前から士別市に通じる国道239号と2kmほど重複し、その後また朱鞠内へと北上を続ける。
 ここから先の朱鞠内湖までの区間、早春の雪解け後の時期、そこに私がこの土地を好きになった理由がある。
 朱鞠内は北海道でももっとも雪深い土地で、真冬には3mにも迫るような積雪になり、その雪が完全に解けて消えるのにはゴールデンウィーク頃までかかるのが常である。
 そうして長い冬が終わると、春を待っていた野の花が一斉に花を咲かせる。雪解け水の流れる湿地にはミズバショウやエゾノリュウキンカ、空き地や林床にはカタクリやエゾエンゴサク、エゾキンポウゲなど、まさに至る所がお花畑に変わってしまうのだ。
 厳しい自然の中でこそ感じられるこの感動の風景、かってここに暮らしていた人たちはそこに春の喜びを感じていたのだろう。

 最後にたどり着くのが朱鞠内湖、日本最大の人造湖である。
 アカエゾマツや白樺が主体の混交林に周りを囲まれたその様子は、どこか外国の風景を感じさせる。
 湖の姿を楽しむためには美深へ抜ける途中の展望台か、キャンプ場のある湖畔へ出るか、この二つしかない。
 湖畔からの眺めもそれなりには楽しめるが、やっぱり朱鞠内湖の魅力を堪能するためには湖上へ出るのが一番である。
 湖上へ出て気が付く朱鞠内の空の広さ、そして複雑に広がる入り江のために湖上を進むにしたがって次々と周りの風景が変わっていく面白さ。カヌーがあれば最高だが、遊覧船や貸しボートもあるので、時間があるのならば是非湖上からの眺めも楽しみたい。
 冬期間の1月中旬から3月末には氷上ワカサギ釣りも楽しめる。期間中いつでも確実に釣果が期待できるので、寒さは厳しいが遊んでみる価値はある。
 寒さと言えば、朱鞠内は極寒の地としても知られている。朱鞠内より先に母子里という地区があるが、そこがマイナス41.2度の日本最低気温を記録した土地だ。
 本当に、全てにおいてダイナミックな自然を味わえる土地である。
 朱鞠内湖を紹介するのならば「笹の墓標」のことにも触れておきたい。
 昭和10年から始まった朱鞠内〜名寄間の鉄道工事、昭和13年からの雨竜ダム建設工事では、朝鮮半島から強制連行された労働者が過酷な条件の下で働かされ多くの人名が失われた。
 その死者は光顕寺というお寺に運び込まれたと言う話しであるが、このお寺が現在は「笹の墓標展示館」として一般公開されている。
 ここは決して観光地ではない。ただ、朱鞠内湖を楽しむのならば、そんな過去の事実を知っておくのも良いだろう。

  幌加内では最近、若い人達が色々と新しい取組にチャレンジしているという話しである。
 朱鞠内湖近くの旧深名線跡に広がっていたカタクリの群落が最近は次第に小さくなってきたりと気になる変化があるものの、一方でこうした新しい動きがあるのは頼もしい。
 これからも姿を変えていくであろう幌加内の姿を、私も楽しみに見守っていきたい。

そば畑 そば畑 そば畑
夏の空とそば畑

雨に煙るそば畑

菜の花の混じるそば畑
幌加内の風景 幌加内の風景 幌加内の風景
秋の幌加内

幌加内の紅葉

冬の幌加内
エゾエンゴサク エゾキンポウゲ 水芭蕉
エゾエンゴサクの群落

エゾキンポウゲとエゾノリュウキンカ

道ばたの水芭蕉

見聞録関連ページ 2002年キャンプ日記 ・他キャンプ日記に多数掲載
周辺のキャンプ場 朱鞠内湖畔キャンプ場 ・幌加内湖公園
参考サイト mailto 幌加内 ・空知民衆史講座朱鞠内と光顕寺」 
周辺地図 マピオン地図

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